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『前立腺がんの治療でEDになる?前立腺癌の代表的な3つの処置によって発症する勃起不全に関して日本性機能学会専門医が解説』

ほとんどのED検査は国民健康保険を使う事ができない

  • 前立腺がんの治療でEDになる事が多い。
  • 前立腺癌治療には代表的に 『手術療法』 『放射線療法』 『内分泌療法』 の3つが有る。
  • いずれの処置も発症の仕方や頻度の違いはあれども、勃起不全を起こす事が有る。
  • いずれの処置によって発症したEDも、バイアグラなどPDE5阻害薬の適応になる。
  • 手術療法で神経に大きなダメージが発生した場合、PDE5阻害薬は効きにくい。


前立腺がんの主な治療は、いずれもEDを引き起こす可能性が有ります。


前立腺癌の代表的な処置は大きく3つ有ります。
それは 『手術療法 : 根治的前立腺摘除術』 『放射線療法 : 外照射・内照射』
『内分泌療法 : アンドロゲン除去療法 』 の3つです。 これらはリスクの大小はあれども、いずれも勃起不全症をその処置によって発生させてしまう可能性が有ります。


前立腺がんは、他の悪性腫瘍に比較すると、治療による生存率が高い傾向があり、 それゆえに、他の悪性腫瘍よりも、治療後の 『生活の質 (QOL:quality of life) 』 を考える必要性が髙いとされています。 『生活の質』 とは端的には、命をつなぐだけの生活でなく、生活を楽しめているかなど治療後の総合的な生活の満足度を示す指標の事で、 EDなどの存在は、このQOLを大きく下げてしまうと言われています。


いずれの処置によって発生したEDに対しても、バイアグラなどのPDE5阻害薬(ホスホジエステラーゼ5阻害薬) は治療の第一選択になりますが、 残念ながら前立腺癌への処置内容によっては、これらの薬剤が効果を示しにくいケースも有ります。


本稿では、前立腺癌の代表的な治療方法である3つ、 『手術療法 : 根治的前立腺摘除術』
『放射線療法 : 外照射・内照射』 『内分泌療法 : アンドロゲン除去療法 』 における、勃起不全の発症リスクやその対策、また治療などについてそれぞれ解説しております。 宜しければご一読下さいませ。


<当ページの項目リスト>

  1. 【手術療法 : 根治的前立腺摘除術によるEDの発生】
  2. 【放射線療法 : 外照射・内照射によるEDの発生】
  3. 【内分泌療法 : アンドロゲン除去療法によるEDの発生】

1.【手術療法 : 根治的前立腺摘除術によるEDの発生】

前立腺癌の手術を原因として発生するED

前立腺癌の代表的な3つの処置の内、こちらでは 『手術療法』 によって発症する勃起不全に関して解説いたします。 前立腺がんの手術療法 : 根治的前立腺摘除術は、本疾患の治療として最も標準的なもので、基本的に前立腺を癌ごと取り除く手術です。


この治療の直後は、ほぼ全例が一時的な勃起不全になり、その内66%はそのまま勃起不全が定着してしまうとされております。 また、この処置によって年間約1万名ほどのED患者さんが発生すると報告されています。


手術療法によって発生するEDは、海綿体神経へのダメージが主な原因と考えられていて、 手術中の損傷 ・ 牽引 ・ 血流低下 ・ 炎症などがこの海綿体神経にダメージを与えるとされています。


一方で、この処置によるED発症の予防のために、様々な方法が考案されております。 その内、勃起に関わる神経や血管の温存、 また薬剤や器具を利用した勃起リハビリテーションは、そうした予防策の中でも代表的なものです。


また手術によるダメージが少ない腹腔鏡やロボット支援下 (スコープとロボットアームを組み合わせた治療法)の手術も 勃起不全の予防効果が期待されています。


前立腺がんの手術治療によって発生してしまった勃起不全には、 まずはバイアグラなどのPDE5阻害薬の利用が検討されますが、 神経に大きなダメージが発生してしまったケースでは、 こうした薬剤も効きにくい可能性が高いです。


2.【放射線療法 : 外照射・内照射によるEDの発生】

前立腺癌の放射線療法を原因として発生する勃起不全症

前立腺癌の代表的な3つの治療法の内、こちらでは 『放射線照射』 によるEDの発症に関して解説します。 放射線照射もまた、前立腺がんに対して標準的に行われている治療方法で、放射線を使用して癌を縮小もしくは無力化させる事を目的としています。 この処置は、体の外から放射線を照射する 『外照射』 、ならびに体の中から照射する小線源などの 『内照射』 に分かれます。 また、この処置は手術療法など他の処置と組み合わせて施行する事も多いです。


この処置によって放射線照射1年後に27%が、 2年後には36%が、3年後には38%が、EDを発症すると報告されています。 前述の手術療法の場合は、処置直後にED発症者が最も多く、 その後段々とEDの改善者が出て来ますが、 放射線療法の場合は逆で、治療後の時間経過に従って、ED発症者が段々と増えて行きます。


放射線照射による勃起不全症の予防策としては、 病変部分以外も広く放射線にさらされる従来の方法と違って、 疾患本体に限定して放射線を照射する事が出来る 『三次元原体照射』 などの強度変調型放射線照射に大きな期待が寄せられています。


放射線照射による前立腺がん治療でEDが発症するケースにおいては、 70~90%の割合でバイアグラなどのPDE5阻害薬がED改善に有効とされており、 他の前立腺癌に対する処置に比較すると、放射線照射はPDE5阻害薬が効果を示しやすいと言えます。


3.【内分泌療法 : アンドロゲン除去療法によるEDの発生】

前立腺がんの内分泌療法を原因として発症するED

前立腺がんの代表的な3つの治療法の内、最後の解説は 『内分泌療法』 による勃起不全の発症について解説します。 内分泌療法 : アンドロゲン除去療法は前立腺癌では、主に転移性癌を対象に行われる処置で、 男性ホルモンをブロックする事で、前立腺がんの増殖の停止、腫瘍の縮小を期待して行われます。


男性ホルモンは性欲や勃起機能と密接な関連があるため、 この治療法では69~91%と高い頻度でEDが発症すると報告されています。 しかし内分泌療法によって発症する勃起不全では、同時に性欲の低下も併発している事が多く、 この場合、勃起不全が出現しても、それを問題として認識しないケースも多いとの事です。


内分泌療法によって発症したEDにおいても、バイアグラなどのPDE5阻害薬は、ED治療上の第一選択になりますが、 この処置によって発症したEDの場合、内分泌療法による治療期間の長期化とともに、 PDE5阻害薬による改善率が段々低下していくとも報告されています。



以上、代表的な前立腺がんの治療である 『手術療法 : 根治的前立腺摘除術』
『放射線療法 : 外照射・内照射』 『内分泌療法 : アンドロゲン除去療法 』 によって発生するEDに関して、それぞれの発症リスクやその対策、また治療などについて解説させて頂きました。



(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2020-06-015)


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